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zoom RSS 『医師ベシューン』抗日戦争を戦う八路軍に命を捧げたカナダ人

<<   作成日時 : 2018/12/19 18:07   >>

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 「医師ベシューン」(1990年カナダ映画, “Dr. Bethune: The Making of a Hero”)は、毛沢東の八路軍に従軍して日本の侵略軍と戦ったカナダ人外科医、ノーマン・ベシューン(Henry Norman Bethune, 1890-1939)の実話をもとにしたドラマ映画である。演ずるのはドナルド・サザランド。1970年に制作された反戦コメディ、「M*A*S*H」で、朝鮮戦争の野戦病院で活躍する外科医役を好演したのが評価されての起用だろう。映画ではカナダの上流階級から飛び出し、中国奥地の野戦病院に命を捧げる熱血外科医を手堅く演じている。なお、日本ではべチューンと表記されることが多いようだが、ここでは英語での呼び方に近いベシューンを採用する。

 ベシューンは1939年、以下のように書きしたためている。

 こんなことが可能だろうか。社会階層のひとにぎりを占めるにすぎない少数の金持ちが、さらに富を得るために百万の貧者をそそのかし、他の百万の同じような貧者を攻撃させ破壊させる。恐ろしい考えだ。金持ちはいったいどうやってこれらの貧乏人を中国に来させたのか。真実を言ったのだろうか。いや、本当のことを知っていたら彼らは来なかったはずだ。金持ちは労働者に、「もっと安価な資源と市場とさらなる利益がほしいから」、などと説明したりはしない。この残忍な戦争は「民族の宿命」で「天皇の栄誉と国家の誉れのためである」と言ったのだ。とんでもないまやかしだ。

 侵略戦争の手先は、殺人などの悪事から利益を得る犯罪者の手先と変わらない。日本の八千万の労働者、農民、失業者はそれで儲かるのか。スペインのメキシコ征服から、英国のインド占領、イタリアのエチオピア強奪まで、歴史上すべての侵略戦争が、戦勝国の労働者に利益をもたらしたことがあるだろうか。いや、一度たりともない。日本の労働者はそもそも自国の天然資源である金銀や鉄、石炭や石油から利益を得ているか。彼らは遥か昔に、自然の恵みを自らの手にすることを放棄してしまった。それは金持ち階級のものなのだ。

 ......では、侵略戦争や植民地強奪は単にでかいビジネスなのか。そのとおり。だが国家犯罪の下手人は、その本当の目的を聞こえのいい美名やら理想やらで覆い隠してしまう。彼らは人殺しをして市場を奪取し、天然資源を強奪するために戦争をする。取引するよりは盗むほうが安いし、金で買うよりは虐殺するほうが簡単だと気づいたからだ。これが戦争の秘密だ。すべての戦争の秘密なんだ。利益、ビジネス、利益、血まみれのカネ。

 ......これら人類の敵はどんな容貌をしているだろうか。額に犯罪者の烙印を押しているだろうか。いや、真逆だ。地位も名誉もある人たちで、お互いに「紳士」と呼びあっているし、世間もそう呼んでいる。滑稽にもほどがあるよ、紳士だなんて。彼らは国家や教会や社会の中心勢力で、余剰な富で公私にわたって慈善事業を支えている。プライベートな生活では親切で思いやりのある人たちだ。法律も守る。だが彼ら「やさしい殺し屋」に言える特徴がひとつある。制圧した地域の人びとを利益のために脅し、ケダモノみたいに唸り声をあげるんだ。無慈悲で野蛮で、狂ったように残酷で、死刑執行人のように非情な人たちだ。彼らが生きている間は世界に恒久平和は訪れないだろう。そのような人間を存在たらしめる組織はつぶさなくてはならない。彼らは苦痛を生み出す。(1939)

 以上は英文手記(注)から引用翻訳したが、映画では後半の場面で、独白のかたちで聞くことができる。

(注)英語原文、"Wounds"(Norman Bethune)は”The Global Consciousness Project”サイト内の以下のページで読むことができる。http://noosphere.princeton.edu/bethune.html


 監督のフィリップ・ボーソスは、ベシューンの波乱万丈の生涯を、八路軍兵士とともに野戦病院をつくる過程を主題にしつつ、そこに過去の出来事のフラッシュバックを織り交ぜることで、時代を行きつ戻りつさせるシナリオで描いた。彼と関わりのあった人物の回想を、配役に語らせたりもしている。そうすることによって、多才でしかも非常に強い行動力をもつ外科医、ベシューンが、革命を夢見た戦士として鑑賞者の前によみがえってくる。

 ノーマン・ベシューンはオンタリオ州の裕福な家庭に育ち、外科医としての人生を順当に歩み始めていた。だが、自らが結核を患ってしまう。サナトリウムで静養するしか治療法のなかった当時、ベシューンは新しい冒険的な外科処置を自らに施してみごとに回復。外科手術のための器具も一ダース以上開発し、猛烈に働く医者になったのだが、貧しい人びとが薬を買えなくて死んでゆく状況に心を痛めていた。ついに結核の治療方法を追求すべくロシアに行き、共産主義者になって帰ってくる。時代は不況のどん底にあり、ベシューンは貧者に無償の治療をほどこす医療施設の必要性を篤志家や政治家などに訴え、援助を求めるのだが、壁は厚かった。結局、自らの属する裕福な支配層には受け入れられず、妻との関係も破綻し、ファシストと戦うべくスペインに行く。そこで前線でも輸血できる移動外科処置方法を普及させるという功績をあげる。いっぽう飲酒癖と女好きが問題になり、義勇軍からも疎まれ、帰国を余儀なくされる。いったんはカナダに帰ったものの、日本の侵略軍と戦っている毛沢東の軍隊を訪ねて中国に行く。漢口から延安へ、戦火のなかの長旅である。持参した蓄音機からはいつも、ベートーヴェンのピアノ協奏曲が流れていた。毛沢東軍司令部にたどりついたベシューンは、医療班の責任者に任命され、移動野戦病院をつくり、医療従事者を教育し、兵士も農民も分け隔てなく治療した。最期は前線での手術で手袋をはめていなかったため、指を切り、感染による敗血症で死亡。享年49歳。ヒューマニストで天才肌の医師でありながら、個人的にはさまざまな問題を抱える野戦の英雄だった。


 最後に助演俳優について少し触れておこう。まず、ベシューンの妻を演ずるヘレン・ミレンが非常にいい演技をしている。最近の大御所になってしまった彼女にゲップがでそうな向きには、「エクスカリバー」(1981)のモーガン役とならんでお勧めできる演技である。アヌーク・エーメが女友達役で出演しているのも、古い映画好きには楽しい。そして、非常に美しい中国奥地の風景がカメラにとらえられているのも見所だ。

  なお、日本では「黄土の英雄/軍医ベシューンの生涯」というタイトルでVHSビデオが発売されたらしいが、劇場公開はされていない。DVDも発売されていないようだ。

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ユーチューブ以下のサイトで映画全編を鑑賞できる。カナダのEncore+というところがアップしてくれており、著作権もクリアしているのであろうと思われるが、当方では確認していない。なお、映画そのものは英語で、英語の自動字幕をオンにすることはできるが正確な字幕にはほど遠く、意味をなさないので使用しないほうがよい。

Bethune: The Making of a Hero(1時間56分9秒、英語・中国語、カラー)
↓ ↓ ↓
https://youtu.be/5zUrbrTb5J0

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 以下は中国版DVD。はっきりした情報は確認していないが、おそらく中国語と英語、両方の音声と字幕で鑑賞可能だと思われる。

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 こちらは日本で現在購入できる英語版VHS。

Dr. Bethune [VHS]
Fox Lorber
1997-10-13

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 こちらはフランスからの輸入版DVD。サイトの説明では言語がフランス語になっており、字幕がフランス語なのか、それともフランス語に吹き替えてあるのかは不明。

Dr Norman Bethune

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