ヨハンナ比較文化研究所

アクセスカウンタ

 毎朝読もう、沖縄の新聞! 「沖縄タイムス」 「琉球新報」

zoom RSS アラン・ショアの死刑廃止論『ボストン・リーガル』(その2)

<<   作成日時 : 2018/10/07 00:58   >>

トラックバック 0 / コメント 0

 前回に引き続き法廷ドラマシリーズ、『ボストン・リーガル』で死刑問題が取り上げられたエピソードを紹介する。2006年秋に放映された「Trick or Treat」(シーズンV第7話)は弁護士、ジェリー・エスピンソン(クリスチャン・クレメンソン)が死刑反対論者であるために苦しむストーリーだ。ジェリーは善人がほとんど登場しないこのシリーズでは稀な「善意の塊」である。非常に有能でもあるのだが、自らのアスペルガー症候群との葛藤で思わぬトラブルを起こしては、いつもアラン・ショアに助けてもらっている。そのジェリーがアランの事務所に飛び込んでくる。偽証罪に問われそうだというのだ。

 米国の法律やシステムについて良く知らない私にはちょっとわかりにくかったのだが、こういうことらしい。連邦裁判所が陪審員を選ぶ場合、”Death-qualified jury”という制度がある。意味を日本語にするならば、「死刑廃止論者免責陪審員制」となるかと思うが、法律用語として別の定訳があるのかどうかは私は知らない。具体的には、この制度の縛りによって、死刑廃止論者は死刑判決が予想される裁判の陪審員になることができない。そこで善良なジェリーは死刑判決を防ぐため、「私は死刑に反対ではありません」と虚偽の宣誓をして、連邦裁判所死刑裁判の陪審員になる。だが2週間後、彼自身が開設した弁護士事務所がインタビューを受けた際、「私は死刑反対派の弁護士です」と宣伝してしまう。これが検察官の耳に入って、偽宣で訴えられてしまったのだ。

 なぜ「嘘をついたんだ」と問うアランにジェリーは答える、「死刑肯定論者のみが死刑裁判の陪審員になるのは汚いやり方じゃないか」と。だが偽証罪の罪は重く、求刑は3年だ。「君が陪審員になったケースは政府にとって非常に重要な裁判だった。この裁判は国家が死刑をその手に取戻す裁判だったのに、君はその大きな計画を台無しにしてしまったんだから」。想像するに、テレビを見ているアメリカ人には判る実際の事件を念頭にシナリオを書いたのだろう。

 アランは陪審員を前に最終弁論を試みる。「死刑については一時忘れて、少し違った視点で物事をとらえましょう。たとえば小さな町で会合があるとしましょう。そこでは大きな焼却炉を建設するべきか否かの投票が行なわれる。だが人びとは会場に入る前に、焼却炉に対してどう思っているかをたずねられる。そしてあなたがもし反対だったら、その会合に参加できない。あなた方の中にこんなことが公正だと思う方がいらっしゃいますか?あらゆる立場の人に意見を述べてほしくありませんか?陪審員の選出方法だってそうであるべきだ。論理的にはあなた方すべてが共同体の代表です。えーと、私たちは死刑が廃止されているマサチューセッツ州の住民ですね。とするとコミュニティーの大多数は死刑に反対であると推測されます。だがその見解をもっている者は誰一人として連邦裁判所の死刑事件の陪審員になれないのです。これは単に特異な意見を排除しているのではなくて、多数意見を排除していることになります。巧みな戦略だ。私たちは皆、直感的に知っています。もし裁判の始まる前から処罰について話し始めたら、自責の念に囚われるでしょう。だって《推定無罪》は私たちの法体系の根本なんですから。でなかったら私たちの国は、権力者の気まぐれで人を投獄したり処刑したりできる全体主義以下の国になってしまう。ジェリー・エスピンソンは私の友達です。彼のことが本当に心配だ。彼は基本的に法を信奉する人間であり、不公正を見てなんとかしようとしたのです。もし彼に何か責められるところがあるとしたら、それは自身の公平性を追求する姿勢でしょう。今、彼はあなた方の姿勢を問うています」。陪審員はジェリーに無罪の評決を下す。

 さてこの回のエピソードでもいつもと同じく、複数の事件が並行して展開する。アランがジェリーの裁判で奮闘しているいっぽう、若手弁護士デニーズは、長らく重病を患っていた許婚(マイケル・J・フォックス)が国外で手術中に死亡してしまう。ところが献体するはずだった身体のあらゆる部分が、バラバラにブラック・マーケットで売りさばかれてしまい、最期の別れをすることもできない。これをコメディータッチで追跡する話の展開はなかなかすごい。現実を反映しているのか、それともただ単にふざけているだけなのかは私にはわからない。

 ちなみにクリスチャン・クレメンソン演ずるジェリーは、この番組のなかでも非常に人気のあるキャラクターだった。参考に彼がテーマソングを歌ったおふざけシーンをユーチューブから転載しておこう。



 シリーズにはもうひとつ死刑をあつかったエピソードがあるので、後日紹介したい。なお、今回紹介したシーズンVの日本語字幕付DVDは見つけられなかったので、以下に英語版へのリンクを貼り付ける。

Boston Legal: Season 3/ [DVD] [Import]
20th Century Fox
2007-09-18

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

アラン・ショアの死刑廃止論『ボストン・リーガル』(その2) ヨハンナ比較文化研究所/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる