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zoom RSS 『月面一番乗り』(2005)究極のモキュメンタリー

<<   作成日時 : 2016/10/23 02:13   >>

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 「実は第二次世界大戦以前の1938年、すでにソヴィエトの宇宙飛行士、イヴァン・ハルラーモフが人類史上初めて月面に到着していたが、何らかの理由で極秘扱いとなった」。これはまっ赤なウソである。この作り話にさらに詳細な尾ひれをつけ、ドキュメンタリーの手法で仕上げた映画が『月面一番乗り』(First on the moon)だ。監督はロシアのアレクセイ・フェドルチェンコ(写真)。ウッディ・アレンの『カメレオンマン』(原題: Zelig)と同じくモキュメンタリーに分類される作品で、出来栄えがあまりに見事だったためか、2005年ヴェニス・フィルムフェスティバルでドキュメンタリー賞を与えられた。

 映画はチリの山岳部で隕石が発見されたというニュースリールから始まる。地域の住民は「巨大な火の玉が落ちてきた」というのだが、これが月から帰ってきたソヴィエトの軌道衛星だったというわけだ。(アルゼンチンのカンポ・デル・シエロ隕石からの連想と思われる)。だが、その情報は極秘扱いにされていた。ジャーナリストたちは真相をつかもうと国のフィルムアーカイブを調べ始める。そして、戦前に軌道衛星を打ち上げる計画があったことを突き止める。アーカイブからの豊富なフィルムから宇宙飛行士の選別、訓練、仔豚やサルを使っての試験的打ち上げの様子が、実写風のモノクロフィルムで紹介されていく。ロケットの鋳型を作る作業や技師の様子をニュース映像のように挿入するなど、モキュメンタリーとしても芸が細かい。そして、ついに栄誉ある人類最初の宇宙飛行士に選ばれたイヴァンが乗ったロケットが発射された直後、連絡が途絶えてしまう。ここからスクリーンはカラーに変わる。

 詳細な説明はないものの、スターリンによる封じ込めがあったらしく、以降、計画は闇に葬られてしまう。だが、実はイヴァンはチリに生還していた。現代の取材班はイヴァンの足跡を追う。「1938年3月、チリに巨大な火の玉が落ちたという新聞記事を発見した私たちのクルーは、現地に取材に入った」、などというまことしやかな調子だ。カメラや機材を抱えた一団がチリの高地を歩く様子が、アンデスの民族音楽を背景に美しく撮影されているが、これも作り話。お話としては、イヴァンは長い旅をしてロシアにたどりつく。途中、KGBが彼の行方を追っているのだが、イヴァンはサーカスに隠れたりして逃げおおせる。ボルシェビキに捕まった日本兵捕虜、伊藤某が草原で奇妙な男を見たと証言するシーンもある。

 このモキュメンタリーの面白さは、はじめから大嘘とわかっている話を徹底的にノンフィクションのスタイルで見せていくところだ。よくもここまで作り話を考え付くものだが、スクリーンの陰でうれしそうに笑っているいたずら好きの監督の顔が見えるようだ。ロシアにはやはりゴーゴリからの系譜があるのだろうか。この映画を見た後は、普段まじめに見ているドキュメンタリーやニュース映像にもけっこうウソが仕掛けられているのではないかしらん、などと疑い深くなりそうだ。

 制作プロダクションが以下のユーチューブに全編を提供してくれているが、ロシア語で字幕はない。
https://youtu.be/ljKPnQNp_kA



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