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zoom RSS 私の好きな幽霊:イヴァン・カラマーゾフの場合

<<   作成日時 : 2018/08/05 19:39   >>

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 『カラマーゾフの兄弟』は世界各国で何度も映画化されていて、ロシア語版・ドイツ語版・テレビドラマ化などそれぞれに面白い。今回はその中からイヴァンに現れる悪霊シーンの描き方に特化し、1968年ソヴィエト連邦版を紹介する。まあ、夏なのでお化けのお話だ。私がこの映画に最初に出会ったのは遥か以前、父親に連れられて行った地方の公民館である。映画そのものは非常に面白かったが、子どもだったのでドストエフスキーの真髄などわかるわけもなかった。ただ、この幽霊シーンは鮮明な記憶となって脳裏に焼きついた。ウン十年たってDVDを買ってゆっくり鑑賞したが、いい年になってもやはりこの場面は好きである。

 以下にユーチューブへのリンクを貼るので、幽霊シーンをご覧になっていただきたい。わずか5分足らずで画質はあまり良くないし、英語字幕がついてしまっているが、悪霊とイヴァンとのやりとりの面白さは十分に味わえると思う。鑑賞の助けにセリフの簡単な日本語訳を作成して、以下に載せる。なお小説のこの場面はもっと長くて、会話内容も信仰や神の存在、死後の生、良心の不在と罰、文学論や哲学的屁理屈など、ドストエフスキーならではの宇宙が繰り広げられていて非常に読み応えがある。

↓↓↓こちらから動画にリンク↓↓↓
https://youtu.be/6TH4zHqbzVM


【セリフの日本語訳】
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悪魔:なぜ検事に会わなかったんだ?


イヴァン:明日だよ、すべて明日だ・・・。お、お前か!なんでまた来てるんだ!

悪魔:どこにいられるってんだよ、外は吹雪じゃないか。寒いだろ。 

イヴァン:俺はお前など怖くないぞ。お前はおれの幻で、おれの病いなんだ。だが俺はお前に勝つ、居候めが。

悪魔:ふふん、居候か。地上に降りればおれは居候に決まっているさ。だが君は私の実在を信じ始めたようだね。

イヴァン:信じない、一分間だって信じないよ。お前は俺の化身だ。俺の汚れた思想と感情の化身なんだ。お前を滅ぼしたい。そうだ、タオルをぬらして頭に乗せよう。こうすればお前はきっと消えていなくなるだろう。

悪魔:今日は様子がちがうじゃない。わかってるよ、偉大だよ、高貴だよ。明日、兄を弁護するんだろう?そして自分を犠牲にするんだもんなあ?

イヴァン:黙れ、蹴とばすぞ!

悪魔:そいつはありがたい、私の実在を信じている証拠だ。人は幽霊を蹴ったりしないもんな。私が炎の翼を輝かせながら現れないでこんな姿で現れたので腹を立てているのか?なんでこんな卑しい悪魔が来たかとね。

イヴァン:愚かだ、底なしの愚か者だ。

悪魔:何言ってんだよ。暖炉を焚いてくれよ、リューマチなんだ。

イヴァン:悪魔がリューマチになるのか?

悪魔:なって悪いか?私が時々人間に化けるのを忘れたのか?人間に化ける以上、人間の病気もいただくわな。

イヴァン:悪魔にしちゃ上出来だな。

悪魔:だが私はどこでリューマチにかかったのか。ここではない。ペテルブルグで外交官の夜会に招かれた時だ。

イヴァン:ははは、情けない奴だ。リューマチでお前の存在を信じさせるつもりか?嘘は巧くつけよ、おれは百分の一も信じないよ。

悪魔:でも千分の一は信じるだろう?

イヴァン:一瞬だって信じるものか!

悪魔:無駄だよ。この地上にある哲学者がいた。彼はすべてを否定した。法律も良心も信仰も。その上、未来の生活まで否定した。死ねば闇と思っていた。はっはっは、ところが生活があった。彼は怒って叫んだ、”私の信念と違う”とね。

イヴァン:正体を捕まえたぞ! その話は俺が考えたんだ。やっと捕まえたぞ!

悪魔:私が君を捕まえたのさ。君が私を信じたくなるように話したんだ。

イヴァン:嘘をつけ!悪魔の実在を信じさせるために現れたんだ!

悪魔:そうさ。だが動揺や不安、信仰と不信の戦いなどが、君のような良心のある人間を苦しませて自殺を考えさせる。君を信仰と不信仰との迷いに導きたかった。

イヴァン:お前は神を信じないのじゃないのか?

悪魔:どう言ったらいいのかな・・・

イヴァン:神は存在するのか?

悪魔:知らないね。

イヴァン:神を見たろう?見ても信じないのか?いや、お前は実在していない!お前は俺だ!俺なんだ・・・俺だあ!

悪魔:私も君と同じ哲学を持とう。人間の中にある神の観念さえ破壊すればいい。そこから始める。全人類が神を否定すれば、人間は偉大な精神に育まれて神聖化され、”人神”が出現する。その時が来れば、過去の道徳的限界を飛び越えていいのだ。神のために法律はない!何事も許される!あらゆる事がだ!

イヴァン:やめてくれ!やめてくれ・・・


 『カラマーゾフの兄弟』の映画化については後日、機会があったら取り上げたい。なお、小説の日本語訳は米川正夫版か江川卓版がよい。

 紹介した映画のDVD日本語字幕付はこちら。

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