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zoom RSS 【論文紹介】『インターネット時代における欧州極右の台頭』:極右出版”アークトス”の場合

<<   作成日時 : 2018/04/20 19:58   >>

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 2018 年2月以降、ネット上に投稿された論文、『インターネット時代における欧州極右の台頭』は、ヨーロッパにおける極右出版とその最新事情について批判的に論考したものである。出典や参考文献を駆使し、ネット上および出版界における過去のイデオロギーとの連結やカルトの影響、ヨーロッパ新右翼およびアメリカのオルタナ右翼(alt-right)との関連性などを、多岐にわたって論じている。著者のLouie Dean Valencia-Garciaはテキサス州立大学の歴史学アシスタント・プロフェッサーで、専門はデジタル・ヒストリーとヨーロッパおよびスペイン・地中海地域の多国籍な歴史。

 それによると2005年の始め、ITP(Integral Tradition Publishing、統合伝統出版)というオランダの小さな出版社が、民族主義者と伝統主義者と白人至上主義者のネットワークをつくり、”現代性のオルタナティブな展望”(an alternative vision of modernity)というスタンスで動き始めた。まず、あまり知名度のない著者たちをかき集め、神秘物やオカルト本、ファシスト本を売ることによって影響力を広げていった。その思想は反民主・反リベラル・反グローバリスト・反モダンで、「伝統的イデオロギーに基づく白人国家のグローバル・ネットワーク」を目指す。意図的に歪曲して再構築した空想上の歴史(alt-histories)を流布し、「過去の伝統に回帰しよう」とナショナリズムの文化闘争をも呼びかける。次に2009年、スウェーデンの実業家であるダニエル・フライバーグがITPの関連会社、アークトス(Arktos)をインドに設立。イギリスに拠点を広げ、自社を「極右イデオロギーの大衆化への橋渡し」的存在と位置づけた。Arktosは低予算でデジタルと紙、双方の出版に成功したため、これまでは周辺でうごめいているにすぎなかった極右の連中が、「平等と民主主義と多元主義に対する戦争」に公然と集まリ始めた。現在、ITPのウェブサイトには274,976件の訪問があり、Arktosは140冊以上の極右本を発行し、フェイスブックのフォロウワーは43,130にのぼる。(ちなみに左派系で著名な出版社、Verso Booksのフォロウワーは77,738である。)

 Garciaの論考は、ITP/Arktosにおける人の動きや宗教、民族差別、ルーツとなる戦前ファシズム思想について、実に詳しく論じている。登場する人物や学派の一部を挙げてみても、スティーブン・バノン、スティーブン・ミラー、ドナルド・トランプ、フランクフルト・スクール、文化マルクス主義、ジェイソン・ジョルジャニ、マルティン・ハイデガー、ハンス・ギュンター、フランシス・フクヤマ、ハレ・クリシュナ、ウラジーミル・プーチン、リチャード・スペンサーなど、多岐にわたる。門外漢の私には論評する力量もないので、以下にリンクを貼る。

Louie Dean Valencia-García’s series
The Rise of the European Far-Right in the Internet Age.
Part I – Rise of an Esoteric Company: What is Arktos?
Part II – ABCs of Arktos: People, Ideas, and Movements
Part III – History Repeating Itself: The Rebirth of Far-Right Ideology and Internal Strife
Part IV – How Fascist is Arktos?: A Traditionalist Confronting Fascism
Part V – Generation Identity: A Millennial Fascism for the Future?

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