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zoom RSS 『さらばバルセロナ』(2014年ドキュメンタリー)ツーリズムが地域を破壊する

<<   作成日時 : 2017/11/30 20:58   >>

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 バルセロナは人口160万に満たない小さな都市である(面積は横須賀市ぐらい)。だが急速に増え続ける観光客が、地域住民の生活に著しい不都合をまねいている。この現象をわかりやすく言えば、「20人座れるレストランに300人来ないでくれ!」、ということだ。エドワルド・チバス・フェルナンデス監督はドキュメンタリー、“Bye Bye Barcelona“(2014)で観光メッカのさまざまな問題を解決しようとする地域住民に照準をあて、その深刻さを訴える。ガウディにまつわる名所の混雑ぶりをとらえたカメラワークも、なかなか魅力的だ。

 地元のエンリク・ヴィラ・デルクロス教授によると、観光スポットの中心に位置するランブラス通りはもともと、ブルボン王朝がその権力を誇示するために造った排水溝を兼ねた道路だった。そこにはカタロニアの長い歴史が横たわっていて、例えば1909年にカタロニア語が禁止されたという過去を思い起こさせる場所なのだ。体制と民衆との対立の歴史、自由への渇望をきざんでいるのがランブラス通りだと教授はいう。だが今は観光客でごったがえし、お土産屋が立ち並ぶさわがしい場所となってし まった。

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 地域住民はいう。「ツーリズムはいい事だ。害のない産業だし、みな観光を楽しむのはいい」。だがここ数年増え続ける観光客の数は、小さな地域の許容量を超え、街全体がテーマパークになってしまった。この20年ほどで急激に増えた観光客のおかげ でホテルが立ち並び、民間の宿泊所は無数にあり、物価は観光客スタンダードで高騰した。例えば旧市街の住民は10万5千人ほどで、もともと過密度がバルセロナ平均の倍である。そこに1万7千床のホテルと619の認可民宿、千から8千の違法民宿がある 。街中のホテルやレストラン、バーで夜中までパーティーや飲み会が続き、通りからは民家も覗かれる。住民が利用しあっていた小さな商店は観光客が利用しないから次第に消えていき、騒がしさに耐えかねた人々も去っていった。地域共同体がくずれていく。

 サグラダ・ファミリアの周囲にはひっきりなしに観光バスが停車していて、人でごったがえしている。地域住民の苦情にやっと 腰をあげた市がバス駐車場をすこし離れた場所に移したのだが、こんどは新しい駐車場からサグラダ・ファミリアまでの道路が観光客でうまってしまい、新たな苦情が来ている。グエル公園まではタクシーで大渋滞。とうとう市は公園を民営化し、入園料 を取ることで少しの解決をみた。だが、住民は公園から何キロ以内という住民票を提出しないと、自分たちのグエル公園にタダで入れなくなってしまった。

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 新しい問題もある。もともと市にはホテル増設を禁止する「使用計画」があったのだが、2013年にこの改定版である「新使用 計画」が認可された。地域社会の崩壊にともなって旧市街に空ビルが多数できたため、そこにまたホテルを建設することを市が認可してしまったのだ。市民は立ち上がり、新法に反対するデモンストレーションを通りで展開した。「この街で生まれ育ち、 ここで死を迎えたりと思っていたけれど、この喧騒をずっと我慢しなきゃならないの?」、「この街で起こっていることは、バランスを欠いているよ」。

 ツーリズムが生み出す収益はカタロニアGDPの12%を占め、バルセロナに10万の雇用を生んでいる。ツーリズムは住民も肯定する好ましい産業であるはずなのに、あまりにも急激な観光化が他産業を衰退させてしまった。地域住民をないがしろにするな、という「古都住民協会」の人々のキャンペーンが続く。

 以下のサイトで映画全編をご覧になれる。スペイン語に英語字幕付き。54分ほどずっど観光客だらけの映像だが、やはり世界有数の名所だけあって非常に美しい。
http://www.cultureunplugged.com/documentary/watch-online/play/51885/Bye--Bye-Barcelona




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