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zoom RSS 『故郷』(HEIMAT・1919-1982・ドイツ)深く考えずに生きる群像ドラマ

<<   作成日時 : 2017/05/07 13:20   >>

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 『故郷』(Heimat - Eine deutsche Chronik)はドイツのテレビ用ドラマ3部作の第1部として制作され、11話連作(925分)で1984年から放映された。第一次世界大戦の戦後処理からナチスの台頭、戦後の回復までの時代をシャッバッハ(Schabbach)という架空の農村の群像ドラマとして描いており、非常に高い視聴率を得たとともに、その作風について論争も巻き起こったようだ。30年を経て鑑賞してみると、原作者の実体験を元にしたナレーションとしての資料的価値は高く、またモノクロとカラーの世界を行きつ戻りつする美しい映像にも非常に魅力のある作品ではある。だが、「民衆はなんとなく生きて、巻き込まれたのよ」型のぼんやりしたドイツ農村コミュニティ肯定は、深く追及すべきプロットの数々についてその表面をかすめてやりすごす結果を生み出しており、ほとんど評価できない。

 この作品の制作より数年前の1979年、米国テレビシリーズの『ホロコースト』(1978年、マーヴィン・チョムスキー監督)がドイツでも放映され、物議をかもしていた。監督で脚本家でもあるエドガー・ライツは作品が物事の黒白を単純化していると憤慨したという。このことが影響したのかは不明だが、結局ライツの『故郷』は、戦前戦中へのノスタルジーを露わにした作品になってしまった。では以下、925分のお話をものすごくかいつまんで紹介する。

 物語は農村シャッバッハに住む鍛冶屋一家、ジーモンを中心に展開する。第一次世界大戦の戦争捕虜としてフランスの収容所に収監されていた長男パウルが村に帰ってくる。驚き、喜ぶ村人たちの中には肺病で出兵できなかったが写真撮影が得意な次男・エドワーツや妹のポーリンもいる。パウルは村人から迫害されているロマの娘、アポロニアと密かに想いを通じているのだが、因習のきびしい村ではいっしょに暮らせない。結局、ラジオを村にひくという夢を捨てきれないパウルを残して、彼女は独りで村を去る。その後、近所の美しい娘・マリアと結婚して家庭をもつパウルだったが、ある日、マリアや息子のアーンストやアントンにも別れを告げずに消えてしまう。以後、彼は戦後まで村に帰ってこない。

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 弟のエドワーツは療養先のベルリンで出会った明るくて派手好きな娘・ルチィと結婚し、ナチに入党する。ユダヤ人住居の窓に石を投げる子供たちに出くわすが、得意のカメラで撮影するばかりだ。そんな騒動を経て、ポーリンは町の時計屋と結婚する。マリアとパウルの息子二人は成長し、ナチスの制服を着るようになる。そのころには村中がナチスの色に染まっている。パウルの母・カタリーナはナチスに否定的だが、他の村人にそんな態度は見られない。

 高速道路建設のために村を訪れたユダヤ系の技師・オットーと恋におちいるマリアだったが、夫がアメリカで生きているという消息がわかり、事態は急変する。オットーは失意の中で村を去り、爆弾処理班に入る。夫はハンブルグ港まで帰ってくるが、ジーモンという姓がドイツ人らしくないため上陸できず、再びアメリカに帰る。オットーは後日、爆死する。マリアにはオットーとの間に息子・ハーマンができていた。

 ドイツが敗北し、村にアメリカ兵がやってきた。ルチィはすばやく彼らに取り入る。アメリカで実業家となったパウルが高級車で村に帰ってくる。母のカタリーナや周囲の人々は喜びにわくが、マリアとの間はうまく行かない。マリアがどうして村を去ったのか問い詰めるが、本人も「よくわからない」としか答えられない。息子のアントンは東部戦線から歩き続けて帰ってくる。ハーマンは成長して、グラマースクールに通う。パウルは息子・アントンの始めたレンズ工場を援助した後、またアメリカに帰ってしまう。ハーマンは工場の秘書で年上のシッセと恋におちる。シッセが身ごもったため、マリアやアントンは二人を引き離す。マリアにとっては、ジーモン一家で初めて大学に進学できる息子のじゃまは誰にもさせたくなかった。ところでハーマンは音楽の才能があり、シッセとの仲を裂かれたとき、村の教会のオルガンで自作の曲を弾く。作品の流れからはまったく唐突な展開だが、その後、ハーマンは村を去り、著名な音楽家になる。

 実はこの物語の語り部として、カール・グラジッシュがいる。グラジッシュはマリアと同じく1900年にシャッバッハで生まれ、パウルと共に第一次大戦の西部戦線を経験し、負傷して村に帰り、雑用をやりながら独り身を通す。彼の目を通して、これまでの長い話が語られるのだが1982年、マリアがその82年の生涯を終えたとき、彼女の葬儀で集まる村人や親戚をわきにグラジッシュもまた天国に昇る。あとはあの世でのランチキだ。これで『故郷』の第1部が終わる。

 最初に述べたとおり、映像は非常に美しい(画質が良いという意味ではない)。また、戦後生まれのものにはわからない当時の因習や親族に縛られる人々の暮らしもわかって、なかなか見ごたえがある。だがしかし、ドイツの現代史について「私は村からこう見た、こう聞いた」だけのストーリーに終始する大河ドラマは、やはり深く考えていない作品なのだ。3部作の続編もすでにDVDが発売されているようなので、この先どういう展開をしているのか、機会があったら見てみようと思っている。

『故郷』(HEIMAT)のテレビ用トレイラー(Youtubeより)




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