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zoom RSS 『デトクラシー あるいは債務主義』(Debtocracy) ギリシア、つくられた債務国(字幕日本語)

<<   作成日時 : 2017/01/06 22:05   >>

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 『デトクラシー あるいは債務主義』(Debtocracy)は、2010年以降のギリシア経済危機に取材し、その債務がどのように膨れあがり、IMFや世界銀行の救済策にどのような問題点があったかを白日のもとにさらすドキュメンタリー。監督はアリス・ハチステファーノで、2011年制作。

 2009年10月に誕生したパパンドレウ政権は、旧政権が財政赤字を隠蔽していたことを暴露する。2010年ギリシア救済に乗り出したIMFは、国民に厳しい緊縮財政を強いた。そしてギリシア人は世界中から「怠け者だ」と非難されることになるのだが、資本主義の歴史を注意深く見てきた経済学者や社会学者は、事態をまったく異なる次元から分析する。これは「自由資本主義の危機だ」というのである。社会理論家のデヴィッド・ハーヴェイや経済学者のコスタス・ラパヴィツアスがアメリカ合衆国を例にとって示した説明は、要約すると次のようになる。「低成長時代の到来と労働者組織の抑制、国際競争力を展開するための労働市場のグローバル化などが進むなか、金融システムも大きく成長する。この「金融主義化」で住宅バブルがはじけ、国は金融機関救済のために国庫の金を出す、つまり納税者の金を使うという一連の流れが事態を深刻化させてきた。」

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 そしてギリシアにやってきた危機は、はるかに深刻だった。USAの場合は連邦政府と連邦準備制度が介入し、諸州間の不均衡を解消することができた。だが国を持たない「ユーロ王国」では、諸国間の不均衡を解消する手立てがない。実際、ユーロ圏ではドイツなどの中枢諸国はもっぱらその恩恵を受けるが、周辺諸国の競争力は後退してしまう。後者にあたるのがポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシア、そしてスペインのいわゆるPIIGSである。これらの国々は「統合ヨーロッパの貧しい親戚」と呼ばれ、グローバルな危機に晒されている。

 『デトクラシー』では、この不平等なシステム下で大国がどのように力をたくわえ、ギリシアのような周辺諸国がどのように疲弊していくのかを、専門家や政治家への豊富なインタビューと分りやすいアニメを使ってみせてくれる。2001年アルゼンチンを債務不履行に追い込んだ新自由主義者たちとIMF、1898年キューバを支配して前政権の借金を踏み倒したUSA、イラク攻撃に際し前もってフセイン打倒後の公債帳消しを模索していたブッシュ政権、諸国に金を貸す交渉人、いわゆる経済ヒットマンを以前はやっていたが今は人権活動家であるジョン・パーキンズの「当事国では一部の非常に裕福な層だけが恩恵にあずかる」という証言、等々。

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 そもそも一部資本家や富裕層が富を蓄積することで膨らんだ債務を、いったいその内実を知らなかった国民が背負う義務があるのか。例えばエクアドル。エクアドルは石油が発見され、裕福な国になれるはずだった。だが石油発見以来、「独裁と貧困と経済ヒットマンの国」になってしまった。IMFや強国の資本がやってきて、インフラに投ずる金を貸与された後、エクアドルは予算の50%を債務返済に充てることになる。国家レベルの借金地獄だ。経済相を経て2006年に大統領になったラファエル・コレアは「北側諸国はエクアドルから不正利得を得てきた」と非難し、オイル歳入の80%は厚生や教育、そして雇用創出に使うべきだと主張した。さらにIMFや世界銀行の内政干渉を止めさせるためにその派遣員らを追放、負債の詳細を調べる会計監査委員会を設置した。委員会が1976年から2006年までの債務契約のすべてを審査し、負債の大半が違法であると判明したため、政府はその70%の支払いを停止し、2013年から2030年にかけて想定されていた支払利息を取り除いた。

 ギリシアでもエクアドルの経験を生かして、権力者の影響を受けない会計監査委員会を設置する動きが始まった。まずは、国が抱える莫大な借金の詳細な調査が必要だ。どんな借金なのか、貸手は誰と誰なのか、関与した銀行はどこか、手続きはどのように行なわれたのか・・・。すでに債務の非常に大きな部分が、違法・不当であるということが明らかになっている。例えばシーメンスは大臣や官僚に対して10年以上契約を取るための賄賂を繰り返していたし、ゴールドマン・サックスは日本円からユーロへの無効な古い交換レートを使って負債を実際より低く偽装して契約を取り、莫大な稼ぎを手にしていた。ゴールドマン・サックスは武器売買にも関与し、ギリシア政府は庶民の年金額を引き下げながら、戦闘機や潜水艦などの兵器をユーロ圏大国から輸入している。アテネ・オリンピックでも同様に、シーメンスやゴールドマン・サックスとの不正な取引が行なわれている。2011年3月、これらの内容を調査して広く国民に公開するための監査委員会設置が、国内外の研究者や文筆家、芸術家や組合代表らによって要求された。これがこの作品が撮影された2011年時点での出来事である。

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 後日談になるが、現在ではギリシャに対する融資契約がドイツとフランスの銀行に法外な利益をもたらしていたこと、そしてそれをIMFの理事たちが承知していたことが明らかになっている。

 この力強い作品は、より多くの人々に観てもらうために、パブリック・ドメインの形でインターネット上に公開されている。正月休みを利用してヨハンナ比較文化研究所が日本語字幕を付け、以下にアップロードした。ぜひ鑑賞してほしい。なお、私はギリシア語は習得していないので英文スクリプトを基本に、フランス語スクリプトをたまに参考にしながら翻訳した。どうしてもギリシア語原文を理解したい部分は希英辞書を使った。(上映時間は1時間14分、画面右下の□で大画面になります。)





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