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zoom RSS 『イラク・バーゲンセール!』戦争に群がる請負企業群の話(Iraq for Sale)

<<   作成日時 : 2016/09/14 18:42   >>

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 イラク戦争は数十億ドルにのぼる巨大産業であり、それが米国人の税金で賄われた。その規模は、イラクで二番目に大きい部隊の実態が民間警備会社で、他国のどんな軍隊よりも大きかったことからも推測できる。『イラク・バーゲンセール!』(Iraq for Sale)は、イラク戦争に群がる民間企業群とその相関図を白日のもとにさらした2006年のドキュメンタリー。監督はBrave News Filmの創設者でもあるロバート・グリーンウォルド(Robert Greenwald, US)。

 まず、映画冒頭のナレーションをそのまま書き写してみよう。「私たちが戦争に盛んに関わるようになった昨今、以前は政府がやっていたことが民間企業に取って代わられるようになった。食料や洗濯、居住設備は軍によって供給されていたが、イラクでは軍のインフラを超える需要があるため、民間契約業者がその埋め合わせをしている。イラクのあらゆる所でこの請負業者を見た。戦車の修理やヘリコプター整備などの業務に携わるかなりの業務を民間業者が請け負っている。10万の民間請負企業がイラクやクウェート、そしてその周辺地域で動いている。この戦争は歴史上類をみない規模で民営化されているのだ」。

 インフラだけではない。現地には民間軍事会社が2万も入っていて、あらゆるところで政府軍を補完している。

 実名でアブグレイブの拷問を報告したことで知られる元アメリカ陸軍兵士は述懐する。「聖書をギリシア語とヘブライ語で読んでたんだ。その延長でアラビア語を(国防省言語研究所で)学んだ。4万ドルの学生ローンを払うには軍隊に入るか秘密情報取扱尋問官になるしかなかった。9/11以前だったし、本当に誰かを尋問することは想定していなかった」。彼は正規軍兵士だったが、ここでも民間企業が関与していた。人権弁護士であるシェリーフ・アキール(Shereef Akeel)はある日、助けを求める電話を受ける。アブグレイブから出所してきたというその人物は、拷問の様子を詳しく語った。彼の証言はこうだ。「陸軍兵士にまざって私服の人間がいて、そいつが命令を下すんだ。民間会社の奴が拘束者を尋問し、拷問したんだ」。タイタンとCACI(カーキー)という二つの会社がこれに関与していた。CACIの場合、データベース処理の名目で内務省に雇われていたが、いわゆる一括契約で実際にはあらゆる業務を任されていた。事務やIT業務の契約なのに、コンピュータじゃなくて生身の人間から情報を得ていたというわけだ。CACIの2005年企業収益は16億ドルを超える。

 ジャーナリストのマーク・ベンジャミンは言う。「2003年当時、ペンタゴンはパニック状態で早急に諜報部員を増補し、足りなければ外注した」。結局、イラク関連の外注はすごく儲かるビジネスになった。。CACIの元社員たちは言う。「契約先にザクザク金をくれるもんだから、要りもしない仕事があったりね」。「イラクに行けばタックス・フリーで10万ドルを手にできるんだから、一介のメカニックにとっては抗しがたい魅力があったよ」。ということでいくらでも仕事を創っちゃうわけだ。2002年から2005年までの間にCACIの契約料は3倍に跳ね上がった。こうして訓練されていない人員を使って一般人を拘束・拷問し、質の低い情報を得るという仕組みができあがっていった。

 通訳を軍に提供することによって20億ドルの収益を得ていたタイタンも同様である。元米軍准将であるジャニス・カピンスキーによると、「軍は通訳や翻訳をやる人材の確保に必死で、手あたり次第雇用していた」。タイタンに雇用されたことのある通訳が回想する。「しゃべるんだけどブロークンだとか、しゃべるけど読み書きはできない者とかいたな。採用試験は全然なくて、僕も電話で数分しゃべっただけで採用されたよ。軍はタイタンを信用してたから、僕らの仕事を信用した。でも僕らは全く訓練されていなかったんだ」。「通訳は何がおこっているのか全く理解していなかったから、おそらくその結果として、多くの人々が負傷したり殺害された。アメリカ人も命を失った。ただ金を稼ぎたかったためにね」。タイタンの歳入も2001年から2004年までの間に2倍以上になっている。

 ところで、アブグレイブで拷問に関与した正規の兵士たちは現在18年の刑に服しているが、いっぽうでこれを指揮していた肝心の契約会社社員はお咎めなしだった。軍事法廷の管轄外というわけだ。つまり契約会社の社員がイラクで殺人を犯したとわかった場合、本国に送り返されて別の契約会社でまた働くことができる。実はこれら契約企業の幹部はもともと退役した軍高官たちである。だからこそ民間企業が軍の仕事を獲得できるわけだ。退役軍人や政府高官、そして防衛産業が排他的につながっているのがワシントンなのだ。CACIもタイタンも、米軍のケータリング業務をやっているハリバートンも民間軍事会社ブラックウォーター(現在のアカデミ)もすべて、このサークルのお仲間だ。そして戦争開始以来、ハリバートンの株価は4倍に跳ね上がっている。

 民間企業の社員には、単純に現地のインフラを整備して住民の役に立つつもりだった者もいる。だが、彼らも襲撃や爆弾作戦に巻き込まれないわけにはいかなかった。犠牲者の家族は声を上げ始めたが、それでもハリバートンやKBRは、次から次へと戦場に人員を送り込んだ。モラルなど関係なく、ただ儲けることにしか興味がないのだ。汚職や浪費、拷問を防ぐための修正案が複数の州で提案されたが、どれも否決されたばかりか、外注に関する監督機関も存在しない。70分を超えるこの長いドキュメンタリーに数多くの証言者が登場し、イラクの外注現場の惨状を訴えたが、当の民間企業経営陣は誰ひとりとしてインタヴューに応えようとしなかった。死の商人たちはメディアの批判など痛くも痒くもないのだろう。

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監督のロバート・グリーンウォルド。

 ちなみに後日談になるが、イラク政府はブラックウォーターのイラクからの即時撤退を要求し、2009年1月に米政府も合意したと伝えられた。だが同3月、米政府はブラックウォーターとの契約を延長した。その後、ブラックウォーターからイラク政府に贈賄があったかについての調査が司法省で始まったが2012年、訴状提出も告訴もなしに調査は終結してしまった。

 なお、このドキュメンタリー『Iraq for Sale』は制作会社であるBrave News Filmが全編をネット公開してくれている。以下のリンクでじっくり鑑賞していただきたい。(非常にショッキングな映像がかなりたくさん挿入されていますので、ご注意ください。)
http://www.bravenewfilms.org/watch_iraqforsale

(注:冒頭の写真は2002年ロンドンにおけるイラク反戦デモのもので、映画のシーンではありません。)




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