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zoom RSS 優生思想とドイツ女子青年団

<<   作成日時 : 2016/08/14 00:21   >>

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 『ナチスドイツの女性たち』("Women in Nazi Germany", 別名"Hitler's Brides":ケイト・ヘイスト監督)は、2001年に英国チャンネル4で放映されたドキュメンタリー。ヒトラーの熱烈な支持者の大半が女性だったことは、これまであまり焦点をあてられてこなかった問題だ。これをテーマに番組では無名の一般女性たちがどんな教育のもと、何を感じてナチスに協力していったのかを探るため、若き日にドイツ女子青年団(ドイツ少女同盟とも訳される。BDM:Bund Deutscher Maedel)を経験した女性たちにインタヴューし、貴重な証言を引き出している。

 ナチスは男性中心の集団である。1933年に権力を掌握して以来、彼らは政治家や公務員から女性を排除し、彼女たちに婚姻とともに退職して家庭に入ることを強要した。大学には入れず、女性教授も認められない。にもかかわらず、ヒトラーが獲得した票の半数は女性からのものだった。彼女たちは第三帝国の女性像を好んで受け入れたのだ。計算づくで独身をとおすヒトラーに若い女性は歓喜した。当時ドイツ女子青年団員だった女性は回想する。「退屈な夫よりは独身男性のほうが望ましいでしょ? そりゃヒトラーは男としては魅力なんか全然なかったけど、でも力を体現していたことが彼の魅力だった」。この発言は、洗練された大都会であるはずの東京でなぜ石原慎太郎があれほど女性に支持されていたのかの謎解きでもある。

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 家庭的かつ健康なドイツ人女性像を目標とするヒトラー政権は、結婚した女性を家庭に入らせることで失業問題のほうも改善させた。集団結婚式を行なわせ、新婚カップルには国のローンを提供する。そして、子どもを4人以上産めばこのローンは返済済みと見なす。こうして女性は出産を奨励されたわけだ。男性に天国のような世界を提供するための母であり妻であることが理想とされ、花嫁学校があちこちに創られた。女性は10歳でジュニア・ヒトラー・ユーゲント運動に参加し、14歳から18歳はドイツ女子青年団で料理や出産育児にまつわる知識を学んだ。また、健康な肉体をもつ美しいアーリア人としての体操競技も盛んに奨励された。インタビューに応じた女性は、同年輩の女性が集まっていろいろな活動をやったり、あるいは歌を歌いながら街を行進する当時の毎日が楽しかったと回想している。

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 これらの活動は優生思想に基づいて組織されており、参加はアーリア人女性のみに制限された。「純血で遺伝的疾患がなく、肉体的にも健康な女性から健康なアーリア人の子どもが生まれる」という思想のもと、ユダヤ人やロマ、スラブ人、病者や障害者は排除されたのだ。こうして女性たちは、「私たちは最もすぐれた民族の女性なのだ」という優越感をもってナチスに協力していくようになる。親衛隊のエリートと結婚する女性は、3代前までさかのぼって純血を証明しなければならず、180もの書類を出して初めて結婚証明をもらえたというからすごい。こうした「純血女性」たちには、堕胎はゆるされなかった。もし中絶しようものなら投獄され、死刑が待っていた。たいへんな世の中である。

 しかし、現実にはひそかに中絶していた女性がいる。彼女はインタヴューに答え、「3人目ごとに自分で中絶したの。だから、子どもは6人いるんだけど、6人目は本当は9番目の子どもということになるわね。・・・子どもはほしかったわ。でも、私は子どもを強制されたくはなかった」。

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 いっぽう、体が弱い子どもや適応能力が劣るとされる子どもたちには過酷な運命が待っていた。当時、看護婦をしていた女性が経験を語る。「障害のある子がいたら、申告しなくてはならないの」。ある日、雇用主の家に放火した16歳の女性が連れてこられた。「軽い認知症と診断されたんだけど、医師は不妊手術を施すっていうのよ。そのことについてすごく考えたわ。そして、その娘には本当に申し訳ないと思った。でも、法律だから、しかたなかった」。

 1938年の水晶の夜を少女として目撃した女性も、当時を回想する。「助けてーって声が聞こえて窓からのぞいたら、家が燃えていたの。お母さん、なぜ誰も消さないの?なぜ消防車は来ないの?って聞いたの。そしてら、「部屋で寝てなさい」とすごく厳しく言われたわ。その後、母さんは出て行った。しばらくしてユダヤ人を15人連れてきたの。みんな近所の人よ」。その夜、彼女の母は15人の隣人を助け、知人たちと連絡を取り合って逃したのだそうだ。わけもわからずドイツ女子青年団で楽しんでいた少女だちが、しだいにヒトラーのやっている事の恐ろしさを把握していく過程である。

 これらの証言については、監督のケイト・ヘイスト(Cate Haste)も本を出しているが、クローディア・クーンズ著の『父の国の母たち』が非常に詳しい研究書として出版されており、日本語訳も出ている。

 このドキュメンタリーは今のところ、以下にアップロードされていて鑑賞できるが、著作権については不明なので将来的には削除されるかも知れない。
https://youtu.be/tg0qo6c82aE


 

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